今日の目的地はカンボジアのポイペトである。
ポイペトはタイと国境を接し、カジノが林立するカジノ街である。
ここに僕はバカラをやりに行くのだ。
ここへ行くにはまず、タイ側の国境の街のアランヤプラテートまで行く。
ここから国境を陸路で越えてポイペトまで行く事になる。
アランヤプラテートまでは以前はカジノバスと呼ばれる大型バスがルンピニー公園から出ていたが、現在は出ていない様だ。
昨年の夏、待てど暮らせどバスが来ず、無駄な時間を過ごしてしまった事があるので今回はサクっとエカマイ(東バスターミナル)からミニバスで行く事にした。
乗り場は30番乗り場で料金は240バーツ(約1000円)。およそ4時間かかる。
何度も通った道なので道中に見るべきものもなく、ひたすら暇である。無理やり目をつぶって寝たふりをしてみるがなかなか寝れなかった。
そうしてようやく着いたアランヤプラテートなのだが、ここにはロンクルア市場というコピー商品だらけの激安市場がある。
ここをぶらつくと面白いのでブラブラしていたら、バイクに乗った女から声を掛けられた。
「どこへ行くのか」
どうせ何か物を売りつけようとしているか、その他のいかがわしいお誘いであろうと無視しているといつまでも付いて来る。
咄嗟に角を曲がっても付いて来るし、いきなりUターンしても同じ様にその女もUターンして戻って来る。
バイクが通れない小道に入っても遠回りしてまた近づいてくるし、それを異常なほど何度も何度も繰り返すのだ。
いい加減気味が悪くなってきたのと、しつこ過ぎて頭に来たのとで、ある角で待ち伏せして
「一体どういうつもりだ!」
と、強めの口調で詰問した。
すると女は急にその場でどこかへ電話を掛けだしたのだ。
「意味わからん・・・」
と僕はその場を離れて近くの靴屋に入った。
その店で靴を物色していると突然トントンと肩を叩かれ、振り向くとさっきの女と男が2人立っているではないか。
んんん・・・? 一体どういう事なのか?
僕はいぶかしげな顔をしていたと思う。
すると男が
「警察だ。パスポートを見せろ」
と言って警察手帳らしき物を見せるではないか。
僕の頭は混乱した。あっという間に目まぐるしく様々な思いが頭の中を駆け巡り
「これは一体どういう事だ?」
「この男は本当の警官なのか?」
「俺は何も悪い事はしていない」
「パスポートを見せるべきなのか」
「これはパスポート詐欺ではないのか」(海外で日本人のパスポートは高値で取引される)
「パスポートを渡して持って行かれたらどうしようもないぞ」
「いや、見せるべきではない」
そうしてパスポートは見せず
「何が問題なのだ?」
「一体どういう事だ」
と抗議していると彼は何度も「パスポートを見せろ」と迫って来る。
「おまえは中国人か、それとも韓国人か?」
と言うではないか。
どうやら僕を中国人か韓国人と疑っているらしい。
「いや、違う。俺は日本人だ!」
「本当か?だったらパスポートを見せろ」
それでも尚、見せないでいると「おまえは本当に日本人なのか?」「だったら見せてみろ」と何度も言われ、挙句警察署まで連れて行くと言う。
事ここに及んでは仕方なく、僕はパスポートを見せる事にした。
ただしギュっと握って絶対に持って行かれない様にだ。
赤い、菊の紋章が入った日本のパスポートを見せると
「あれっ」という感じで少しトーンダウンしたのが分かった。
「入国スタンプを見せてみろ」
僕は急いで入国スタンプを探したが、もう何十個も押されているスタンプの中から昨日押されたスタンプを探すのは容易ではない。順番もめちゃくちゃに押されているので焦ってなかなか見つからなかった。
そしてようやく見つけて、昨日の日付のそれを見せると僕は一気にまくし立てた。
「これが昨日押された入国スタンプだ。タイには昨日入国したばかりだ。一体何が問題なのだ。俺はこれからすぐにカンボジアに行く。ビザだってある!」
そしてカンボジアのビザ(1年有効の何度でも入国出来るビザ)を見せて
「もういいだろう、俺は行く!」
そう言ってスタスタ歩いてその場を離れようとすると、まだ「一緒に警察署まで来てくれ」とか言っていたがその声を無視してどんどん歩いて行くとそれ以上は追って来なかった。
どうやら疑いは晴れたらしかったが心臓はドキドキしたままだった。
一体、中国人や韓国人がどの様な犯罪を犯しているのかは不明だが、海外で警官に疑われ、パスポートを取り上げられるかもしれないという恐怖はなかなかのものだった。
タイでは日本人は真面目で信用出来る、というのが一般的な印象なので僕が本当に日本人だった事も幸いしたと思う。
それにしても中国人や韓国人は海外でも犯罪を犯して日本人に迷惑かけんな!と言いたい(# ゚Д゚)