目的はバカラをする為である。
タイ側の国境の町、アランヤプラテートを越えるとカンボジア側の国境の町、ポイペトがありここには沢山のカジノがあるのだ。アランヤプラテートへはバンコクの東バスターミナルがあるエカマイという場所からミニバスに乗って向かっていた。
エカマイからアランヤプラテートまではおよそ4時間ほどの道のりだが当時170バーツ(約500円)で行く事ができた。
エカマイを出ると何か所か停留して客を拾い、それからようやく高速的な道路に乗り、しばらくするとパーキングに停まった。トイレや簡単な食事をする為である。
そこで僕も普段は噛まないガムなどを買い車に戻るとミニバスはまた国境に向けて走り出した。そしてその時、首からぶら下げている貴重品袋の中にパスポートが無い事に気付いた!!
頭が真っ白になるとはああいう事を言うのだろう。また、よく冷や汗が出ると言うがその時本当に「たらー」と一筋の汗が額から流れるのを経験した。
(冷や汗って本当に出るんですね・・・びっくりです。)
「え~っと、あれあれ、え~っと、あれ、どこで無くした???
さっきガム買った時あったっけ?いやどーだっけ、その時落としたか?
いや、待てよ。そうかもしれないが可能性は低いような・・・
え~と、入国の時は当然あったわけだから、次に手にした時はいつだ・・・
・・・そうだ!!ホテルだ!ホテルでパスポートのコピーを取られた時にレセプションの女性に渡したんだ!たぶん彼女が返し忘れて僕も今まで気付かなかったんじゃないか?」
普段全く使わない部分の脳細胞まで一気にフル活動させて思い出すワタクシ・・・
そして車を走らせている運転手に悲痛な声で「車を止めてくれ~~」と絶叫するボキ・・・
あ~みっともない・・・
幸いというべきかこの高速的な道路は高速ではなく車は道路の端に停まってくれて僕は急いで反対側に道路を渡り、いくらかかるともしれないタクシーを呼び止め、急ぎバンコクにとんぼ返りした。
それにしても解せない。女が返し忘れたとしても僕自身が気付くはずだ。
それにもし2人とも忘れていたとしてもコピーは客全員の分を取るわけだから次の客が来たらコピー機の中に僕のパスポートが残っているのを発見するはずで、そうしたら電話ですぐに連絡するのが普通だろう。それすらも怠ったとしても今朝チェックアウトした時に返さない訳がないはずだ・・・
僕は全く確信が持てないまま唯一パスポートが帰ってきそうな場所へ非常に不安な気持ちを抱えたまま、焦りと「早くつかないか早くつかないか」という実にもどかしい気持ちでタクシーの後部座席に座っていた。
(次回に続きます)