ロストバッケージというものがある。
これは文字通りバッゲージをロストする事であり、空港で預けた荷物が目的地で受け取れなくなってしまう事である。
めったに遭う事はないが、でも実際に発生し統計によるとその確率はおよそ0.5%だという。
僕はバンコクからマカオに乗った飛行機でこのロストバッケージに遭遇した。
マカオから陸続きに中国へ入ろうとしていたところ、空港のターンテーブルでいくら待っても僕の預けたバックパックが出て来ず、挙句ターンテーブルが「ガタン」という音とともに止まってしまった。
一瞬待ってるターンテーブルを間違えたかとも思ったがさにあらず、仕方ないので乗って来た飛行機のエアアジアのカウンターで確認してみる事にした。
結構な時間待たされ、途中「まあこれでも」てな感じで飲みたくもない水など渡され、しばらくするとカウンターのおねえちゃんが言うにはバンコクで積み忘れてしまったとの事・・・
「おいおいおい、ホントかよ!」と思ったがどうにもならない。明日の飛行機で積んで来るので明日またここに来てほしいと言う・・・
起きてしまったことはしょうがないがせめて今夜のホテル代くらい負担して欲しいと訴えるも「ノー」の一点張り。いくら交渉してもラチがあかず、そういう規定はないのだろうか?
仕方ないので今日の中国入国はあきらめ、中心地にある安宿に泊まる事にした。そして半日ポカンと空くことになったのだ。
ところでマカオといえばカジノである。
かつて若かりし頃、沢木耕太郎の本「深夜特急」に影響され「大小」というサイコロを使った賭博をする為マカオを訪れた事のある僕である。ここは当然カジノに行かざるをえまい。
向かったのはリスボアホテルである。
知る人ぞ知るマカオカジノの本家本元である。
体育館をゆうに上回る広大な面積のカジノフロアが何層も存在し中国人を中心に騒がしく賭け事に熱中しており、その熱気たるや凄まじいものがある。
今でこそバカラしかやらないが当時は大小しかやらなかった、というか知らなかった。
その時もやったのは大小である。
ルールは実に簡単で3個のサイコロの合計が9までなら小、10以上なら大、その大か小を当てるというそれだけである。厳密に言えばゾロ目が出たらカジノ側の総取りというルールがあるが。(ゾロ目に賭けてない限り)
そこでの僕は好調であった。
賭け金は少ない。周りにいる中国人に比べると情けないくらいに。(だって彼ら
正気とは思えないくらいに賭けるんすよ・・・)
なんやかんやで結局3万円ちょっと稼ぐ事が出来た。
まあ、賭け金からしたら上出来である。今夜の宿泊代や食事代、もっと言えば飛行機代まで十分元をとる事が出来た。
やはり正義は勝つのである。ロストバッケージという理不尽な目に遭い、貰ったのは水だけというかわいそうな子羊を神はちゃんと見ていたのである。(と思ったらそれから4ヶ月後、味をしめて今度はマカオに大小だけやりに来たら初日の3時間で有り金すべてすってしまい、その後3日間ただひたすら帰りの飛行機を待つはめに・・・)
結局翌日無事バッグを受け取り旅を続けたわけだが、考えてみたら僕のカードは海外旅行保険が付いていた為、ロストバッケージの証明書を貰っておけばホテル代が出たんではないかと今更ながら思っている次第なのです。