旅とバカラと酒と本

自分のおももくままに書き綴るブログです

旅のあれこれ⑨ 台湾のカラオケにて

 台湾のカラオケでちょっとしたスター気分を味わった事がある。

時は1990年6月。その時僕は友人と2人で台北から墾丁(ケンティン 台湾の1番南)まで列車やバスを使って台湾を縦断しながら所々ゴルフ場があれば飛び込みでゴルフを楽しむ、という実にお気楽な旅を楽しんでいた。

 

そして台南で夕食を食べようと入ったレストランがカラオケを歌わせる店だったのだ。

店では御老人達が中国演歌とでも言えばいいのか中国弦楽器の二胡を使った様な、曲調が実にゆったりとした、まあどちらかと言うと言い方は悪いが若い僕達からすれば眠たくなってしまう様な歌を次から次に披露していた。(それはそれで台湾らしくて悪くなかったのだが)

 

そして経緯は忘れたが僕達も何故か歌う事になり、カラオケ台帳を見ると何とブルーハーツの「トレイントレイン」があったのだ!(おそらく当時カラオケ器具と言えば日本の物しかなく、輸入した物がそのまま日本の歌も入っていたのではないかと思う)

 

トレイントレインと言えば当時の僕のおはこである。それでは、という事でこの曲をかけてもらった。

 

中国演歌に対して「トレイントレイン」  実にシュールな組み合わせである。

 

トレイントレインは出だしこそスローだが途中急に大音響でアップテンポになったりスローダウンしたりと当時としては御老人の心臓に悪い曲である。

そもそも台南の地元民しかいないレストランで突然日本語の歌が流れて来る事自体が異例であり、僕が歌い出した途端急に静まり返ったのが分かった。分かったのだが委細かまわず歌い続け熱唱した。

 

そして歌い終わって席に戻ると突然「ダダダッ」とちょっとヤンチャ風な地元の少年少女達が数名僕の席まで駆け寄ってきた。

 

曰く

 

「その曲は何であるのか?」

「あなたは歌手であるのか?」(本当にこう聞かれた)

「何しに台湾に来たのか?」

 

などなど

 

おそらく10代の台湾の少年少女達にはブルーハーツの曲は当時大変刺激的であったのであろう。2~3年前、李登輝が総統になるまで台湾をぶんどった中国国民党独裁政権の時代からすぐの頃である。

 

台湾の少年少女からチヤホヤされてちょっと歌手気分を味わう事が出来たという生涯1度の思い出でした。