人生は時として突然予想もしない事が起こる・・・
12月上旬を目途にマニラにバカラ旅に出ようと思っていたのだ。
ところが、そろそろ航空券を買わなきゃいけないなぁ、と思っていたある日・・・
ふっと下半身に違和感を感じ、見てみると鼠径部(そけいぶ 太腿の付け根の下腹部あたり)にポコンと膨らみを発見したのだ。
(すわっ、癌か・・・)
昨日までは無かった様に思ったが乳癌などと同じでしこりに気付かなかっただけかもしれない・・・
「ついに俺も癌に罹ったか・・・俺の運命や如何に・・・」
などと悲観的な気持ちになりつつも取り合えず近所の外科に行ってみた。
「ああ、これはヘルニアですね」
ヘ・ヘルニア?
ヘルニア、つまり脱腸である。
腹壁に穴があき、そこから腸がはみ出していたのだ。
「ほらほら、こうやって押すと元に戻るでしょう?」
そう言って医者は僕の腸を押して腹の中に戻してしまった。
「ああ、立ち上がるとまた出てくるね~、これは手術しないと治らないんだよね~」
などとおっしゃるのである。
手術した場合、1週間~2週間近く入院しなくてはならないらしい。
まあ、癌でなくて良かったが、それでもこれから仕事が忙しくなるので、そんなに長く入院するのは困る。
そう思った僕は自宅に帰ってからネットで鼠径部ヘルニアについて調べてみると、日本ではまだ6%ほどしか普及してないらしいが、腹腔鏡手術で日帰りで治療をしてくれる所を発見した。
幸い割と近くの病院であり、結局そこで手術する事にしたのだ。
生まれて初めて手術をしたのだが、いろいろと感慨深いものがあった。
まず、麻酔の凄さである。
一体いつ麻酔をかけたのか分からないほどあっという間に眠ってしまっていて、気が付くと
「手術がすみましたよ~、起きて下さい~」
と起こされたのだ。
まるでタイムスリップである。
そして人間の回復力というか自然治癒力にも感銘を受けた。
日帰り手術とはいえ腹を切っているわけで、やはり術後はそこそこつらい。
「いででで、いででで」という感じでちょっと腹を伸ばしただけでも痛いし、咳やくしゃみなどは恐怖でしかない。
僕の場合アレルギーがある為、痛み止めを出してくれなかったのだ。
初日は覚悟があったので痛みも受け入れて気にしない様にしていたが、2日めは緊張感もなくなりちょっと動く度に痛みが走り、これは一体いつまで続くのだろうか、と不安になっていた。
日帰り手術という事ですこし軽く考えていたところがあり、手術後3日しか休みをとっていなかったのだ。
手術の2日後、少し動かねば、と近所に買い物に行ったのだが痛みの為、前かがみになって普通に歩く事が出来ず、また非常に疲労し、到底あと1日の休みで回復出来るとは思えなかった。
その日の夜には入浴したのだが術後シャワーも浴びていなかった為、何と気持ちがいいものか、湯舟に浸かるという習慣があって良かったと心から感動した。
そして次の日、休みの最終日の朝に目が覚めると不思議な事にかなり回復している実感があった。
もちろんまだ痛いし、寝返りを打ったり起き上がったりするのはいつも通りには出来ないが、昨日を考えると人間の身体は確実に元の状態に戻そうという意思がある事を実感した。
そんなこんなで明日から仕事に復帰するつもりでいるのだが、僕の仕事は立ち仕事なので果たしてどうなるか、というのが今のところの懸案なのである。
昨日から今日といった感じで同じ様に更に回復すれば何とかなると思うのだが・・・
そういった事から更に休みを取るのも難しく、今回のバカラ旅は断念した、というお話でした。