真夜中の到着。しかも初めての海外。まわりは今まであまり接した事のない人種の人達。僕は友人と一緒とはいえめちゃくちゃ緊張していた。
当時はスワンナプーム空港ではなくドンムアン空港がバンコク唯一の国際空港で、しかも現在のドンムアンではなく建て替え前の古く暗い空港であった。当時はまだまだ規制もゆるくアジアの空気がバンコクにも濃厚に残っており、空港から外へでたとたんわっとタクシーの運転手に囲まれた。
「なめられたらイカン!」
とっさにそう思った。
なめられたらボッタくられるし変な所に連れて行かれる!
・・・
ボッタくられるのはその通りだが変な所に連れていかれるというのは今考えるとどうかと思う。
とにかくまあ、その時はそんな風に考えめちゃくちゃ警戒していた。
当時はほとんどのタクシーが交渉で値段を決める。
「いくらだ!」
「・・バーツだ!」タクシーの運転手が答える。
絶対にボッてくる!そう思っていた僕は
「冗談じゃない!・・バーツだ!」ときっぱりと言ってやった。
するとどうだろう。一瞬の静寂の後、いっせいに散って他の客の所へ駆けていく運ちゃん達・・・
あらららら・・・
雰囲気的に「何だ、この馬鹿は!こんな奴相手にしてられん!」といったとこだったんだろう・・・
予想外の展開に動転し、動揺してしまった僕達は全員散った後にただ一人近づいてきた運ちゃんにほとんど言い値でタクシーに乗せられてしまったのは今考えても情けない・・・