旅とバカラと酒と本

旅、時々バカラ・・いや最近はバカラついでに旅という感じか・・・

’24年バカラ旅マニラ編④やらかすF君

(よかったらこの話は「’24年バカラ旅マニラ編①」から読んでみて下さい)

 

 

事件はその後起こった。

 

プチ酔拳を発動させ、見事に勝利を収めた我々は気分よくホテルに帰る事になった。

 

ホテルの違うGさんとは途中で別れ、ホテルのすぐ近くのコンビニで、アル中のF君はまだ飲み足りないのでビールを買いたいと言い出した。

 

しょうがねえなあ、と思ったもののアル中だから仕方ない。

 

一緒にコンビニに入ったものの、トイレに行きたくなった僕は(日本以外コンビニにトイレは無い)

 

「じゃあ先に帰ってるわ」

 

と、ホテルに戻る事にした。

 

ホテルに着いて用を済ませ、10分ほどしてから部屋の異なるF君にラインを送ると既読にならない。

 

F君もトイレにでも行っているのか?

それからしばらく経ってから再度ラインを送るもやっぱり既読にならない。

更にライン電話をしてみてもF君は電話に出ない。

 

これはおかしい。

 

コンビニからホテルまで3分位である。

会計を済ませ、戻って来るまでどんなに時間が掛かったとしても10分がせいぜいである。

もう20分は経っている。

 

僕は心配になってフロアの違う彼の部屋まで行ってみる事にした。

 

「ドンドンドンッ」

 

ドアをノックしても返答がない。

 

「F君いる~?」

 

やっぱり返答がない。

 

これはヤバイかもしれない・・・

 

このホテルは高層ビルであり、エレベーターが来るまで時間が掛かる事がある。

もしかしたらまだ1階のエレベーター乗り場にいるのかもしれない。

そう思った僕は1階まで行ってみる事にした。

 

しかしやっぱりいない。

 

外に出てホテルの入口周辺も見てみたがF君は見当たらない。

 

もしかしたら入れ違いで部屋に帰っているかもしれないと、再度彼の部屋に戻ってみるとやっぱりいない・・・・

 

もう別れてから40分ほど経っている。

 

これはもう本格的にヤバイ状況である。

 

何かあったとしか思えない。

 

彼の部屋の前からGさんに電話を掛け

 

「Fが戻って来ないんです。申し訳ありませんが何かあったら協力してもらえますか」

 

そんな電話をしていたその時である。

 

「のほほ~ん」とした顔でF君が戻って来たのである。

 

 

 

「どこに行ってたんだよ!!」

 

思わず怒鳴ってしまった僕。

 

 

聞けばF君は道に迷ってしまったのだという。

僕はそれを聞いて絶句してしまった。

迷うはずがないのである・・・

 

コンビニを左に出て、そのまま少し歩くとロビンソンという大きなショッピングセンターがあり、その目の前が我々のホテルなのである。

これでどうやって迷えるというのだ?

しかも何度もこの道は通っているのである。

 

彼が戻って来ない間、僕の頭の中に「道に迷う」という発想はまるで無かった・・・

きっと何か事件が起こり(つまづいて倒れてケガをして動けないとか、ホールドアップにあったとか)それで戻って来ないとばかり思っていた。

 

迷うはずのないところを迷う、これこそがF君であった。

 

F君はコンビニを左に出るところを右に出てしまったのだという。

右は我々がカジノから歩いて来た方向である。

つまり彼はビールを買った後、またカジノの方向にのこのこ歩いて行ったのだ。

それにしたってどうやって迷う?

さっきまで歩いていた所なのである。

しかもその道は極めて単純である。

 

もう謎過ぎて頭の中は????で一杯になった。

 

しかしまあ、何はともあれ何事もなく無事で良かった。

 

ところでF君はビールを直にわし掴みで持っている。

 

どうしたのだ?と聞くと、道に迷って彷徨っているうちに袋が破けてビールが道路に転がってしまったのだという。

 

マニラのコンビニでは何故か袋は紙袋である(おそらくポリ袋はエコでない為だろう)。

冷たいビールを買ってもそうなのだ。

するとどうなるかというと、すぐに結露で袋が破れてしまうのだ。

袋の底の部分を持ってないとビールは落ちてしまうのである。

僕は初日にビールを買いにコンビニに行った時、それをF君にもしっかり伝えていたのである。

ところがF君はいま目の前で、しっかり袋を破いて直にビールを握りしめている。

時間も結構経っているのでビールは相当生ぬるいはずだ。

そして道に迷って彷徨っている間、怪しげな人達から何度も声を掛けられて本当に怖かったんだという(笑)

 

これこそがF君なのである。

 

F君を海外に連れて歩くというのは、3歳児を連れて歩くのと一緒である。

本当に世話が焼けるのである。

コンビニに置いていったのは僕が迂闊だった。

 

F君は僕の想像の上を行ったのであった(笑)。